「ニュースで痛ましい事件が起きると自分の心もしんどくなってしまう」
「同僚が叱られていると自分も叱られたような気になって気分が落ち込む」
こんな風に他者が感じた思いを、自分も同じように感じてしまった経験はありませんか?
相手の気持ちを考えたり思いやることはとても大切ですが、共感が行き過ぎてしまうと気づかないうちに『共感疲労』という状態に陥ることがあります。
このように、感じてしまった共感疲労を和らげる方法や、どうすれば共感疲労を最低限に抑えられるのかを記事にしました。
特に次のような悩みを持つ人に役立つ内容になっています。
- 共感疲労が具体的にどのようなものなのか知りたい。
- 共感疲労をよく感じてしまう。
- どうすれば共感疲労を軽減させることができるのか知りたい。
- 共感疲労は悪いことなのか?
共感疲労とは
人の気持ちを考えたり、共感することは素晴らしいものですが、自分自身も同じように心を消耗してしまうことがあります。これを心理学では「共感疲労(Empathy Fatigue)」と呼びます。
他者の苦しみや感情に共感し続けることが原因で、自分自身の感情やエネルギーまで消費し、自分自身が疲弊してしまう心理状態です。
一般的な疲労とは違って、「心の疲れ」や「他者の感情を受け取った結果の疲れ」が主であり、特定の仕事や状況などで起こりやすいといわれています。
- カウンセラーなど相談を受ける人
- 看護師、医療従事者
- 教師、保育士、介護職
- 人の気持ちに寄り添いやすく、思いやりのある人
以前は看護師や介護職などの仕事柄、人を支える人が抱える問題として考えられてきましたが、現在では一般の人にも当てはまる現象として知られてきています。
なぜ共感疲労が起きるのか
共感疲労は、心理学では以下のようなプロセスで起こると考えられています。
感情の感染によるもの
共感が起こる際に、相手の感情が感染する無意識的な働きを「情動感染(emotional contagion)」といいます。他者の感情が自分に伝わり、同じような感情を体験することを指します。
心理学者のエレイン・ハットフィールドらが提唱した「情動感染理論」によると、人は無意識のうちに他者の表情や声、行動を無意識に模倣することによって引き起こされると考えられています。この感情を脳に伝えるシステムがミラーミューロンという神経細胞です。このような反応は以下のような人に多く現れます。
- 繊細で感受性の強い人
- 他人に気をつかいすぎる人
- 使命感の強い人
共感疲労の症状とは?
共感疲労は心理症状と、身体症状の2種類があります。そしてその2つが混ざって症状に現れることもあります。以下に代表的なものを挙げます。
心理的サイン
- ちょっとしたことでイライラする
- 気分が落ち込みやすい、悲しい気持ちになることが多い
- あらゆることに対してやる気が起きない
- 無力感、無関心になる
- 感情の麻痺、鈍化
身体的サイン
- 慢性的な疲労感、だるさ
- 頭痛、肩こり
- 食欲の低下
- 睡眠の質の悪化
- 免疫機能の低下
このように共感疲労はさまざまな健康被害をもたらすことがあります。一般的な仕事や人間関係のストレスと似ていますが、「他者の感情に影響される」という特徴がポイントです。
共感疲労の対処法
境界(ボーダーライン)を意識する
共感疲労で起こりやすい症状として、他者の気持ちか自分の気持ちか分からなくなるといったことがあります。まずは、自分と相手の感情を切り分ける「境界線」を意識することをこころがけましょう。
例「叱られているのは同僚であって、私ではない」「これは同僚が抱えている問題なのだ」など。
寄り添うことは大事ですが、全てを自分の感情にしてしまうと疲弊してしまいます。「あの人はあの人」「私は私」と、しっかりと分けて考える癖をつけていきましょう。

共感ではなく、「あの人はこういう感情を抱いているんだな」と理解するということに留めるのがおすすめです。
共感している自分に気づく
共感疲労を感じ始めたら、まずは自分が共感しすぎていることに気づくことが重要です。
相手の感情を自分の感情として受けとっていないか、相手の問題を自分のことのように感じていないか、一度立ち止まって考えてみてください。
共感を使う時間を制限する
悩みや相談に乗る機会があると、共感を全くしないというわけにもいきません。相手の話を聞いてあげることは人間関係の構築においても重要なことです。しかし、話を聞くことで自分自身が疲弊してしまっては元も子もありません。そんな時にお勧めしたいのが、「今日はこの時間まで」などと時間制限を設けたり、シャワーに行くなどリフレッシュを間に挟むことです。そうすることで感情をオフにでき、余計な心の負担を軽減させることができます。
自分の感情を後回しにしない
共感疲労を感じやすい人は、他者の感情には敏感であるのに対し、自分の感情には鈍感になりがちです。
一日の終わりに、今日感じた感情を振り返って、自分の本当の気持ちを聞き出してみてください。自分の気持ちがいっぱいいっぱいの時に人の気持ちを受け取ることは、症状の悪化につながります。あくまで自分の感情を優先することを心掛けましょう。「自分が○○しないといけない」など、義務のように思いこむことは危険です。
離れることで回復する
痛ましいニュースをみて心を痛めた経験がある人は、しばらくSNSやニュースを見ないようにするなどし、物理的に距離を置くことで回復するケースがあります。これらは自己防衛にもなり、健康的な心を守るために重要なことです。
責任感の強い人ほど、他者の痛みや苦しみに共感を抱きます。過度の背負い込みや受け取ることは自分を苦しめる原因ともなります。
特に、「同じような気持ちを感じないといけない」、「相手と同じ苦しみを背負うことが私の役目だ」などと「しなければ思考」に持っていくのは危険です。「相手」と「私」の感情は全くの別物だということを頭に入れておきましょう。
筆者は東日本大震災が起きた当時、大学生でした。津波により、テレビで日に日に犠牲者の数が増えていくニュースにひどく心を痛めたのを今でも覚えています。そんな時、毎日の最新情報から少し離れ、今自分にできることは何かを考えることに集中することで自分の心が今以上に傷つくのを守っていました。人の痛みを受け入れられる容量は人それぞれです。自分の心は自分でしか守れません。このことを踏まえた上で、自分に合った対処法をぜひ考えてみてください。
まとめ
このように「共感疲労」は共感しやすい心の優しい人、相談に乗る機会が多い人になりやすく、
自分の心まで疲弊してしまうマイナス面もありますが、そんな自分を認めることや、うまく共存することで少しでも疲労を少なくすることができます。
まずは情報に触れる頻度や量を自分に合わせて調整することが、予防の第一歩かもしれません。
以下に共感疲労をから心を守るポイントをまとめていますので、是非参考にしてみてください。
共感することは悪いことではありません。少しの共感と理解だけして、あとは手放してあげると自分にも他者にも優しくいられるのではないでしょうか。一人で背負いこまないことが何より重要です。

